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【弁護士による実務解説】いわゆる評価損(格落ち)への対応

覚え書き

NOTE

  • 物的損害
  • 解説

【弁護士による実務解説】いわゆる評価損(格落ち)への対応

2020.08.08

1 評価損や格落ちは、慰謝料として登場する

思い入れのある自動車が事故で壊れてしまった。ケガはないものの、慰謝料を請求したい。

交通事故の弁護士していると、時にこんな相談を受けることがあります。

法律実務の立場から、この問題に形式的に回答すると、以下のようになると思います。

お怪我や死亡の場合には慰謝料請求が認められているが、物的損害のみ発生した場合には、よほどの事情(家族同様のペットの死亡など)がない限り、慰謝料請求は難しいです・・・。

 

こんな返答を受けたことがある方もいるかもれません。

 

ただ、これを交通事故事案に関していうと、相談者さんがおっしゃりたいのは、いわゆる自動車の価値が下がったことへの賠償、いわゆる「評価損」のことである、ということが多々ありました。

評価損は、一般的な用語では「格落ち」などといわれます。

 

交通事故によって自動車が壊れて修理をしたときに、かつては物理的に修理の限界がありました。

また流通市場では事故車として取り扱われることによって、事故前の車両価格よりも事故後(修理後)の車両価格が下落してしまうため、元の価格と事故で下落した価格の差額のことを指して「評価損」とか「格落ち」と呼んでいます。

 

修理しても治らない部分、また治ったとしても価格が下落してしまう部分は、事故がなければ発生しなかった経済的な価値ですから、実務上も限定された範囲ではあるものの、損害として認定されています。

どのような場合に格落ち(評価損)が賠償されるのかについては、裁判所の判断も分かれており,明確に何があれば認められる、認められないといった基準は現在のところありません。

 

2 評価損(格落ち)の獲得の難しさ

交通事故を多く扱う弁護士にとっても、評価損事案は最終的な賠償獲得が難しい部類の相談になります。

修理技術が発展した現代において、そもそも修理が不完全にしかできないことによる、評価損が認められる場合が限定されます。

また中古市場で発生した価格の下落と、事故がなかった場合との差額の認定方法も実務上一つには限定されていません。

一つの目安となるものが、新車登録からの経過期間と中古車販売における事故車としての表示義務の有無です。

中古車市場においては、消費者に対して車両の骨格部位(フレーム等)などに損傷がある場合には、事故車としての表示する義務があります。

このような骨格部位へ損傷あった場合には、中古車市場での下落価格の査定(自動車査定協会の査定書が代表的)や修理費用総額に対する割合的な金額で評価損が認定される傾向があります。

3 弁護士への依頼が前提か

事故による車両価格の低下、という目に見えない損害の認定には困難が伴いますし、裁判所の認定も一定しているわけではありません。

保険会社によっては、そもそも評価損の認定を示談段階で行わないという姿勢を強くもっていたり、弁護士の介入を前提にしていると思われる場合があります。

新車購入直後の車両で、数百万円単位の修理費用がでているような場合には、お怪我の損傷と合わせて評価損の精査をしていくと、ある程度まとまった損害額として最終的な解決額に反映されることがあります。

他方、事故による損害が修理費用に留まっている場合、もともと早期解決の可能性が高かったにも関わらず、望みが薄い評価損でこだわることよって、無為に解決が長引くことはまったく得策ではありません。

このような見込みの判断は、早い段階で弁護士にご相談をいただくことで適切なアドバイスを行うことが可能になります。

交通事故の解決は、全体のスケジュール、ご本人の意向にそって迅速に行うことが最終的な利益となりますので、難しい事案でこそ早めに弁護士にご相談ください。

 

(なお物的損害は扱わないことを明示している法律事務所があるようですのでのお問い合わせの際にはご確認されることをおすすめします)

 

群馬県高崎市飯塚町1124

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