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2020.09.03
交通事故でお怪我をしていても、病院にいくのが事故当日から数日後になった、というご相談はよくあります。
交通事故が起きたとき、ご自身がショックを受けていることに加え、相手の人が怒っていたり、場合によっては相手の救急車を呼ばなければいけなかったり、警察を呼んで状況を説明しなければいけなかったり、保険会社に連絡したり、と非日常のストレス状態が続き通院が後回しになることがあります。
そのような状況では、お怪我をしていても、痛みがあると言い出せなかったり、そもそもショックが大きく体の痛みに気が付かなかったりするため、すこし落ち着いてから病院にいくということがあります。
ご自宅に帰ってからようやくお体の異変に気が付いた、というお話をご依頼者の方からよく伺います。
事故によって発生したお怪我の治療費は、過失割合に応じて加害者(最終的には加害者側の保険会社と自賠責保険)が負担します。
ただ、事故から日にちがたってから通院を開始した場合、「事故によって発生したケガかどうかがうかがわしい」とされて、治療費の支払いを拒まれることがあります。法的には、事故と因果関係がない、という言い方になります。
交通事故の賠償実務で、いわゆる初診遅れ、といわれる状態です。事故の日と初診日が離れれば離れるだけ、因果関係の説明が難しくなっていきます。
自賠責保険でも、多くの任意保険会社でも概ね14日程度が因果関係の有無を判断する分かれ目になるようです。
初診遅れの事故について、任意保険会社に支払い拒否をされ、自賠責に請求した場合、通常の請求書類に加えて、事故状況、症状の発生時期、初診までの症状への対応方法、初診がおくれた理由などの照会を求められます。
この照会で、初診が遅れた「合理的理由」があると判断されれば治療費の支払い等がなされますが、このハードルは高いと言わざるを得ません。
自営業の方が業務多忙を理由に通院できず、23日後の初診と事故との因果関係を主張した裁判例(福島地裁いわき支部H22.2.17)でも、主張した受傷の程度や供述の信用性なども考慮して事故との因果関係が否定されています。
もちろん、事故の相手方や保険会社と連絡がつかなったとか、痛みで通院ができなかった、病院が休みだった、とった個別の事情で初診遅れの「合理的な理由」が認定される場合はあるでしょうし、裁判まですれば事情も変わることがあるでしょう。
ただ、いわゆる「初診遅れ」が事故の実態に即した賠償を得るうえで大きなハードルになることは間違いありませんので、事故のお怪我は必ず事故直後に病院で診てもらうことをお勧めします。
群馬県高崎市飯塚町1124 増田法律事務所
弁護士 増田 泰宏