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NOTE
2020.09.12
(事故概要)
駐車場内当て逃げ事故/警察の介入一応あり(届出未了)/損傷痕跡合致/相手方音信不通
(相談内容と方針)
駐車場内で駐車中に当て逃げをされて、相手の人が修理費を払ってくれなくて困っている、との相談を受けました。
当初、警察の介入があり賠償の約束までしていたのに相手と連絡がとれなくなってしまった。相手を信頼して事故届をしなかったので、相手の名前もわからない、というご相談でした。
事故届をしていない、あるいは相手方不明の駐車場当て逃げ事故のご相談をいただく場合がありますが、多くの場合、事故の立証と賠償の実現の問題があり困難を伴います。迅速な解決を望む場合には、車両保険を利用することになりますが、この場合以後の保険料が上がることがあります。
当て逃げ事故、という類型から、見通しの厳しさはありましたが、ご本人の強いご希望があり、裁判をしてでも賠償を実現したいとのことでしたので受任して対応することとしました。
(経過と解決)
通常の交通事故の場合、警察への事故届がなされますので、事故証明書を取得すれば、事故の相手方の住所・氏名・自賠責保険会社などがわかります。
しかし、当て逃げ事故の場合には、そもそも相手方が不明となりますので、相手方を特定するところから始めなくてはいけません。
ときどき弁護士には特別な捜査権限があると勘違いしている方がいらっしゃいますが、警察や検察と違い、弁護士は私人ですから、特別な捜査権限などありません。ですので、関係各所に照会をしてお答えいただくほかありません。
そのようにして、加害者をなんとか特定し、裁判で事故の立証を行うことになりますが、駐車中の当て逃げの事実を直接認識しているのは加害者のみの場合がほとんです。損傷痕や、車両の利用状況など状況証拠による立証が必要になり、これはとても大変です。
今回は、損傷痕跡をはじめ、状況証拠が比較的多くありました。また、被害者側の保険会社担当者も技術的な見解を作成することに協力的だったことが幸いし、相手車両との接触の立証がなんとかでき、判決まで取得できました。
判決取得後も、相手方の資力が乏しいため支払いや強制執行の見込みが立たず、回収が困難となりました。
なんとかならないかと調査した結果、相手方の任意保険会社が判明し、対物保険の使用が可能であることが判明した。
その後も、相手方が保険の利用に同意しない、そもそも連絡がとれないということで、一進一退の状態が続きました。
結局、対物保険の約款に基づく直接請求権の行使という物損事故では特殊な部類に入る解決方法を保険会社に提案して、ようやく回収まで実現しました。
(ポイント)
事故で被害を受けた場合、相手方からの賠償を受けられることがベストですが、そういった場合だけではありませんので、車両保険の利用と時間をかけての回収の可能性を比較する必要があります。
駐車場の当て逃げ事故で、回収まで実現できる事案は少ないといってよいと思いますが、残っている証拠関係によっては回収が可能な場合もありますので、検討する価値はあるかもしれません。
群馬県高崎市飯塚町1124 増田法律事務所
弁護士 増田泰宏