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NOTE
2020.11.28
多くの交通事故で、被害者側にも一部過失が発生します。
被害者の過失の割合に応じて損害賠償されるから差し引かれることを過失相殺といいます。
一般的には、過去の裁判例などをまとめた基準(保険会社の担当者が持っている緑色の本など)をもとに保険会社から割合の提示がなされます。
ただ、あくまでこれは一般的な基準に基づくものですので、個別具体的な事情を反映しているとは限りません。
事故を体験した当事者の方が、一般的な基準の提示に納得できない、といってご相談にいらっしゃることはよくあります。
過失割合のある交通事故のご相談では、ドライブレコーダーをお持ちになる方が増えてきています。
これまでは、客観的な事故状況が定まらない中で、双方の記憶と残された痕跡から事故状況を推測し、推測された事故状況から過失割合を決める、という二段階の作業が必要でした。
ドライブレコーダーの映像など、事故の客観的な状況がわかることが増えてきて、過失割合の算定は格段に容易になりました。
ただ、客観的な事故状況が明確となっても、個別具体的な過失の評価・割合の配分で意見が分かれる場合はあります。
そのような場合には、車両の位置、速度、接触直前の状況などから双方の落ち度の有無、大きさを一つ一つ拾って考える必要があります。
被害者側に過失割合が発生する場合、賠償を受ける金額から、過失分が控除されるだけではありません。
多くの交通事故では、相手にも修理費用などの損害が発生していますから、相手の損害について、過失分を支払う必要があります。
式にすると以下のようになるかと思います。
①自車の修理費等×(10割-自身の過失)=賠償を受ける金額
②相手車の修理費等×(10割-相手の過失)=賠償すべき金額
過失割合の評価1割が変更すると、①賠償を受ける金額と②賠償する金額がいずれも変動することとなります。
また保険使用の有無とこれによる等級の変更による保険料の上昇の不利益も考慮して最終的な結論を出す必要があります。
今回のご相談では、ドライブレコーダーの映像と現場調査の資料をもとに交渉し、当初提示から2割有利な過失割合の変更ができました。
過失の評価一つとっても、経済的な影響は小さくなく、基準に従って簡単に決定できるものではありませんので、よく考えて示談書にサインすることをお勧めします。
弁護士 増田泰宏